はじめに|なぜ特殊清掃会社が「統計」を発信するのか
AL(エーエル)は、兵庫県内を中心に孤独死現場・事故物件・ゴミ屋敷などの特殊清掃や遺品整理を行っている現場の専門業者です。
日々の現場では、「どうしてここまで発見が遅れてしまったのか」「同じことを繰り返さないために、周りは何ができたのか」という問いに何度も向き合うことになります。
そこで本レポートでは、警察庁や内閣府、総務省など公的機関のデータをもとに、「孤独死(統計上は『自宅で死亡した一人暮らしの者』)」の現状を整理し、日本全体で何が起きているのか、どの層・どの地域にリスクが高いのか、それが現場(特殊清掃)とどうつながるのかを、できるだけわかりやすくまとめます。
「数字の話」と「現場のリアル」がつながることで、ご家族・地域・専門職の方々にとって少しでも役に立つ“考える材料”になれば幸いです。
第1章|警察庁データが教えてくれる「孤独死」のいま

1-1. 「自宅において死亡した一人暮らしの者」とは?
警察庁は、毎年「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者」の統計を公表しています。これは、
- 警察が扱った死体のうち
- 死亡場所が「自宅」
- かつ「一人暮らし」だった方
をカウントしたもので、内閣府の孤立死ワーキンググループでも、孤立死・孤独死の実態を把握する重要な基礎データとして評価されています。(出典:内閣府 孤独・孤立対策「孤立死者数の推計方法等について」)
いわゆる「孤独死」「孤立死」という言葉は法律上の用語ではありませんが、内閣府の整理では、
- 「孤独」…主観的に感じる“孤立感”
- 「孤立」…客観的に見た“社会とのつながりの欠如”
として区別され、実態把握の対象としては「孤立死(誰にも看取られず、一定期間経過後に発見される死亡)」が適切とされています。
警察庁の統計は、「完全な孤立死だけ」を数えているわけではないものの、全国ベースで継続的に把握できるデータとして、現状を知るうえで非常に重要な資料です。
1-2. 令和6年の最新データ:年間76,020人
警察庁の公表によると、令和6年中の警察取扱死体は204,184体で、そのうち「自宅において死亡した一人暮らしの者」は76,020体(37.2%)でした。(出典:警察庁「令和6年中における警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者について」)
つまり、警察が扱った死体のおよそ3人に1人以上が、「自宅で亡くなり、しかも一人暮らし」だったということになります。
さらに、内訳を見ると、65歳以上が58,044人で全体の約8割を占めており、高齢者層の孤立と死亡が強く結びついていることがわかります。(出典:警察庁統計を引用した各種解説サイトより)
1-3. 発見までの日数と「腐敗」の問題
同じ統計では、死亡からの経過日数も集計されています(0~1日、2~3日、4~7日、8日以上など)。(出典:警察庁「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6年)」)
数日以内に発見されるケースも多い一方で、1週間以上経ってから発見されるケースも少なくありません。
現場の感覚としては、
- 2~3日でも「夏」「密閉空間」「高齢者」の条件がそろうと、かなり強い腐敗臭と体液の浸出が起こる
- 1週間以上経過すると、体液が床材や畳、コンクリートに浸透し、ハエやウジ虫が大量発生し、近隣住民からの苦情・クレーム・通報が一気に高まる
といった印象です。
統計上の「日数」は数字ですが、特殊清掃の現場では、その日数分だけ腐敗の進行・被害範囲・作業負担・費用が重くのしかかります。
第2章|死亡場所の変化と「在宅死」の増加

厚生労働省やシンクタンクの分析では、日本全体の死亡数は年々増加しており、2023年には約160万人が亡くなったとされています。
そのうち、
- 病院死:約104万人
- 在宅死:約27万人
- 施設(高齢者施設など)での死亡:約25万人
とされ、「自宅で亡くなる人」は少数派とはいえ、決して無視できない規模になっています。(出典:厚労省統計を基にした各種分析レポート)
在宅看取りを望む人が増えた結果としての「在宅死」もあれば、十分な見守りがないまま亡くなり、時間が経ってから発見される「孤立死」もあります。
数字上は同じ“自宅での死亡”でも、背景や家族の受け止め方、現場の衛生状態はまったく違う――ここが特殊清掃の現場から見えてくるポイントです。
第3章|都道府県別に見る「孤独死のリスク」

3-1. 「人数」で見ると大都市が上位に来やすい
都道府県別の件数をそのまま並べると、どうしても人口の多い東京都・大阪府など大都市圏が上位に来ます。これは、
- 人口母数がそもそも多い
- 一人暮らし世帯も多い
という構造的な要因があるためで、件数だけを見て「東京は孤独死が多い、○○県は少ない」と判断するのは危険です。
3-2. 「10万人あたり」で見ると、地方県が浮かび上がる
総務省の人口統計などと組み合わせて、「10万人あたり何人が『自宅で死亡した一人暮らし』か」を計算すると、人口減少が進む地方県で相対的にリスクが高い地域が浮かび上がる、という分析もあります。(出典:総務省人口推計、警察庁統計を用いた各種分析)
ALとしては、「都会だから危ない」「田舎だから安全」といった単純な話ではなく、高齢化・人口流出・家族構成・地域のつながりのバランスが崩れたところから、孤独死のリスクがじわじわと高まっていると理解しています。
第4章|兵庫・姫路から見える孤独死のリアル
4-1. 清掃業界20年・特殊清掃10年の肌感
ALの代表は、清掃業界に入ってから約20年、特殊清掃・遺品整理の現場にも10年近く携わってきました。
兵庫県内だけを見ても、姫路市・加古川市・明石市・神戸市などの都市部、赤穂市や相生市など海沿い・山間部エリア、それぞれで家族構成や近隣付き合い、賃貸・持ち家比率が異なり、孤独死の「見え方」も変わります。
4-2. 「発見のきっかけ」は誰か
現場でよくある発見パターンは、
- 賃貸物件の大家さん・管理会社が、「家賃滞納」や「ポストの溢れ」に気付いた
- 近隣住民が、「玄関前の異臭」「ハエの発生」に気付いた
- 遠方に住む家族が、「連絡が取れない」「入院予定日に来ない」で警察に連絡した
などです。
数字では見えない部分ですが、誰かが“違和感”をキャッチできる環境かどうかが、発見までの日数や腐敗の程度を左右していると感じます。
第5章|孤独死と特殊清掃の関係
5-1. 統計の「1件」が、現場ではどんな状態か
先ほどの76,020件という数字は、現場の感覚からすると76,020軒分の「部屋」「生活」「人の人生」です。
1件1件の現場で、
- 腐敗臭が建物全体に広がっている
- 床材・畳・コンクリートに体液が浸透している
- ハエ・ウジ虫が大量発生している
- 近隣住民とのトラブル寸前になっている
という状況が起きています。
5-2. 特殊清掃だけでは終わらない
孤独死現場の対応は、
- 消毒・除菌
- 臭気の中和・分解
- オゾン脱臭
- 汚染された床材・畳・下地の撤去
- 害虫駆除
といった特殊清掃に加えて、
- 遺品整理・家財整理
- 原状回復(内装・設備の復旧)
- 売却や賃貸再開に向けた不動産の整理
までトータルで考える必要があります。
ALでは、提携工務店・司法書士・不動産会社などと連携しながら、「片付けて終わり」ではなく、その先の手続きや住まいの整理までサポートできる体制づくりを進めています。
第6章|この統計をどう活かすか
最後に、この統計をどう活かしていくかを整理します。
- 地域や家族が「現実」を知るために
数字を見ることで、「他人事ではない」と感じてもらい、高齢の親・一人暮らしの家族との会話のきっかけにする。 - 行政・専門職・事業者の連携のために
自治体の見守り施策や地域包括支援センターの活動と結びつけ、医療・介護・葬儀・不動産・清掃業者が連携できる土台として活用する。 - 遺族・大家さん・管理会社の「早めの相談」につなげるために
「こんな状況でも相談していいのか…」という不安を軽くし、相場感や必要な工程を先に知ることで、判断をしやすくする。
ALとしては、「怖い現場」だけを見せるのではなく、信頼できる公的データと現場の知見を組み合わせて、少しでも冷静に判断できる材料を届けたい。
その一環として、この孤独死統計レポートを公開していきます。
お問い合わせ・特殊清掃のご相談について
孤独死・孤立死・事故物件の片付け・原状回復でお困りの方は、状況がはっきり決まっていなくても大丈夫です。
とりあえず費用感だけ知りたい
、今すぐは決められないけど、何をすればいいか聞きたい
という段階でも、AL(エーエル)までお気軽にご相談ください。
- 対応エリア:姫路・加古川・明石・神戸・赤穂ほか兵庫県全域(近隣県も応相談)
- 相談・現地調査・お見積もり:無料
参考資料・出典
※本ページのデータは上記公的機関の資料をもとに作成しています。

AL代表の関本理です。
遺品整理や特殊清掃について、ご依頼のご紹介やコラムを執筆しています。
◆取得資格
遺品整理士
特定遺品整理士
不用品回収健全化指導員
